トランプのウクライナ和平提案 (2025/11/30)
10日ほど前の11月19日、米国とロシアの間で秘密裏に結ばれたウクライナ和平提案(作業計画書1/)の全貌が明らかにった。それは極めてロシア寄りで、ウクライナに降伏を求めるものであった。その週末、欧州、ウクライナ、米国が緊急集会をジュネーブで開催し、その提案書を改訂した。
28条項からなる当初案は米国特使スティーブ・ウィトコフが書き、ロシアに寄り添う内容であった。ジュネーブでの改定案は19条項になり、戦犯の恩赦と米国がロシアの凍結資産を手にすることは排除された。ロシアが求めるウクライナ領土の割譲、NATOへの不参加の憲法への明記、米国が与える安全保障の内容といった項目は、トランプとゼレンスキーとの会談で協議するものとして保留した。当初、トランプはワシントンでの会談は11月27日と期限を区切ったが、延期された。(11月29日、ゼレンスキーはウメロフ国家安全保障・国防会議書記ら代表団を米国に派遣したと発表した。協議は11月30日にフロリダ州マイアミでルビオ国務長官、ウィトコフ特使らとの間で行われるとみられる2/。)
この改定案は最終的にウクライナにとって望ましい内容に引き戻したが、ロシアはこの冬の終わりまで交渉しないだろう。交渉が始まるとすれば、それはいつプーチンが戦力確保のためにより広範囲な徴兵を決めるか、ロシア経済が原油価格の落ち込みと経済制裁の影響が深刻になり始めるかに拠る。
加えてロシアは米国政権内の意見対立を眺めている。
ウィトコフ大使やJ.D.バンス副大統領はロシアに望ましい形で停戦を実現し、米国の商業利益を得ることに傾倒する。一方、ルビオ国務長官は伝統的な米国の外交政策を採り、欧州との協調で状況を元の軌道に戻そうとする。
そんな最中、ブルーミングデールが11月25日、ウィトコフ大使がプーチンの補佐官ユーリ・ウシャコフにプーチンはどのようにトランプと交渉すべきかを指導したというニュースを流した3/。そして、ウィトコフ大使はトランプがロシアの要求に立ち戻って、ドンバスの残りの領土も与えると伝えたという。
トランプのウクライナ政策は首尾一貫せず、気まぐれに動いてきた。現状の停戦交渉は極めて流動的である。
去る8月15日にアラスカで開かれた米ロ首脳会談からこれまでの動きを見れば明らかなように、プーチンはトランプの意のとおりには動かない。むしろトランプがプーチンに翻弄されている。
先週の28日に、エコノミスト誌がウクライナ問題でウェビナーを開いた。その中で今回の停戦交渉について七割の人が破綻すると見ているという調査結果を示した。私も今回の停戦交渉が順調に進むとは思わない。
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Working
Plan
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日本経済新聞電子版(2025/11/30)
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https://www.theguardian.com/us-news/2025/nov/26/who-leaked-steve-witkoff-call-kremlin-trump-analysis