多くの中国の科学研究が西側諸国で無視される (2026/6/13)

 

 

中国の科学論文の掲載数が世界一というニュースはよく耳にするところである。もちろん、論文は書いて数を稼げば良いというものではないので、量と質が一致するわけではない。どんな統計データを使うかによって順位は異なる。

 

よく使われるのは次の三つの統計だろう。

 

       (1)           論文総数:           ScopusScopus1/ Web of Science2/が代表的。世界中の査読付き学術誌を収録する巨大データベース。

       (2)           高品質論文:         Nature3/誌グループが選定した約 145 誌の高評価ジャーナル(Nature Index)。

       (3)           高品質論文のうち、Nature誌とScience4/誌だけで見た高品質論文。

 

論文総数で中国は圧倒的であり、米国を抜いて世界最大の論文生産国になった。しかし、高品質論文の指標としてNature誌とScience誌だけでみれば、米国が1位、これに中国2位、英国3位と続く。因みに、日本はといえばNature Index 2025 では5位である。

 

何れにせよ科学技術研究で中国が米国と競って世界をリードしていることは、統計数字が示すとおりである。

 

この論文数に絡んでエコノミスト誌の記事/5にちょっと面白い話が出ていた。多くの中国の科学研究が西側諸国で無視されているというものである。数で圧倒する中国の論文ではあるが、海外の研究者がそれを引用することは少ない。図にあるように、論文数は多いが、引用される数は米国やEUの論文数に比べて明らかに少ない。

 

近年、米英仏独日の研究者が中国の論文を引用する事が多くなってきているが、依然として論文総数の割りには引用されていない。中国の研究者が米国の論文を引用することは多いが、逆は少ない。

 

そこにあるのは質の問題である。中国の研究者は国内の研究者の間で論文を引用し合うが、お互いの研究は同じような内容で差がない。つまり、似たような研究で大量の論文が出される。とりわけ中国の研究組織が先端技術で多くの先進的な仕事をする分野、例えば化学や工学の分野でそれが起きている。つまり、中国では最先端を走る分野に集中して論文が出る。

 

もう一つの問題は一度発表した論文を撤回することが多い点である。撤回論文データベース(Retraction Watch/6)によれば、1996年から2025年の間で中国の論文で撤回された数は米英の論文の6倍に上る。

 

2020年に政府が禁止するまで、中国の大学では、しばしば研究者に対して論文数の割当を決めたり、論文が出版された場合に報奨金を支払ったりすることがあった。政府は営利目的で論文を偽造する組織(いわゆる論文工場/7)や論文の学術評価の指標を意図的に変えることも禁止した。しかし、そんな悪評はなかなか消し去ることが出来ない。

 

西側との地政学的な緊張ゆえか、中国の論文の中で国際協力の下で書かれた論文の比率も下がってきている。2000年から2019年まで24%を占めていたものが、2024年には18%になった。中国が学術において自信を付けた結果なのか、それとも内向きになった結果なのか、どうなのだろう。

 

 

 

 

 

/1     世界最大級の抄録・引用文献データベース。学術出版社であるエルゼビア(Elsevier)社が提供し、世界中の大学や研究機関、企業で広く利用される。

/2     クラリベイト社(Clarivate)が提供する世界最大級のオンライン学術文献・引用データベース。

/3     国際的な週刊科学ジャーナル。総合科学学術雑誌であり、科学技術を中心としたさまざまな学問分野からの査読済みの研究論文を掲載する。

/4     米国科学振興協会(AAAS)によって発行されている科学学術雑誌。世界で特に権威がある学術雑誌の一つ。

/5     The Economist Jun 10th 2026

/6     学術雑誌に掲載された論文の撤回を報告・分析・議論するブログで、出版後査読(post-publication peer-review)の1つ。

/7     Paper Mills

 

 

 

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