首都圏のマンション価格高騰——一極集中の弊害 (2025/11/21)

 

 

東京23区の新築・中古マンションの平均価格が1億円を超えたというニュース1/を聞いても、もはや慣れっこになってしまった。そこにある現実はただ一言―――庶民にとって、東京で家を持つことは絶望的。

 

では、郊外に出れば未だ手に届くのかといえば、それも難しくなった。日本経済新聞が1120日に「郊外の新築マンションも『高嶺の花』 必要な年収、5年間で最大3倍に」という見出しで記事を出している。記事に従えば、この間の年収増加率が10%なので、実質2.7倍に跳ね上がったということだ。

 

マンション販売価格の高騰で、「持ち家から賃貸に」という回避行動が起きるが、その賃貸価格も共連れして上がる。23区内で部屋を借りれば、今や可処分所得の3割が飛んで行く時代になった2/。買うにしても借りるにしても、東京で住み処を確保するコストは恐ろしい程高い。

 

ではこの現象が1980年代後半にあったバブル期の不動産価格の高騰と同じかと言えばそうではない。新築マンションが投資対象となり、更なる値上がりが見込める場所は、政治、経済そして教育の中心地である東京圏、とりわけ23区内に集中する。23区内の不動産は富裕層の投資対象となり、サラリーマンの住居の対象ではなくなった。近畿圏でも価格の高騰は見られるが、絶対額で言えば東京より低い。さらに名古屋圏であれば、サラリーマンでも十分手が届く。

 

結局、この東京圏の異常な不動産価格は東京への一極集中がもたらした弊害でしかない。

 

戦後の高度経済成長期、霞が関の役人は経済の全ての機能を東京に集中し、政府の旗振りの基で経済成長を達成することに邁進した。東京は頭脳で、地方はその指示に従う手足という経済統制の構造であった。そんな時代が過ぎ、やがて日本経済は成熟し、恐ろしい勢いで老齢化が進んだ。しかし、全てが東京中心、そして人口も東京一極集中という形態だけは固定化された。

 

都市機能が分散されていれば、このような状況にはならなかった。米国がその代表例だろう。ニューヨークは金融都市であるが、全ての経済活動が集中するわけではない。巨大企業の本社がどこにあるかを見れば一目瞭然だ。そして政治の中心地は遠く離れたワシントンDC

 

欧州でも首都圏への一極集中にはなっていない。英国のロンドン首都圏の人口は約1500万人(グレーターロンドンは約943万)、フランスのパリ都市部が約1090万人(パリ特別自治体は約205万人)、ドイツのベルリン都市圏が約621万人(ベルリンが約386万人)、である/4

 

東京圏のマンション価格高騰は、今や単なるサラリーマンにとっての経済問題では済まない。

 

貧しくなり続ける日本経済は大きな問題であるが、それ以上に、総人口の3割、3700万人が東京圏に集中するという脆弱な都市構造は巨大なリスクでしかない。関東大震災の再来となれば日本経済は崩壊し、その再興は絶望的なほど難しい。

 

 

 

 

/1     日本経済新聞電子版(2025/10/30

/2     日本経済新聞電子版(2025/9/4

/3     Wikipedia

 

 

 

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