OECD対日経済審査報告書2026 (2026/5/14)

 

 

昨日の日本経済新聞に『OECD「消費税18%まで段階引き上げを」 対日審査、高齢化対応促す』という見出しの記事があり、ふーん、OECDは相当思い切った提言を出したのだなと思った次第である。ところが、記事が引用した「OECD対日経済審査報告書20261/の原文を見ると、これは相当ミスリーディングな記事である。

 

報告書では消費税を18%まで上げることを勧告しているわけではない。様々な財政支出項目と歳入項目の見直しの一つとして、消費税を毎年1%ずつ上げて18%にすると、どのくらい歳入歳出バランスが向上するかを試算した表の中の数字に過ぎない。

 

本文で税制に関する提言はあるが、今の日本の消費税率はOECDの中で最も低いグループにあり、将来の財政の安定化を考えれば消費税を徐々に上げていくことが必要という表現にとどまる。

 

というわけで、日経の記事の書き方に相当問題はあるが、OECDの報告と提言自体は全くもってごもっともな内容である。

 

提言を要約すれば、インフレ率2%という目標を維持し、税制の安定を確保し、社会が老齢化する中で生産性を保ちなさいということである。

l  インフレ率を2%に収束させ、名目賃金をしっかりと上昇させた上で、金融政策を正常化する。それと並行して、中期的に財政を安定化するには社会の老齢化に伴う歳出圧力に目を向け、税収を増やし、補正予算2/を押さえる必要がある。

l  女性の労働参加と労働の質的向上、更なる外国人労働力の活用、労働市場の柔軟性の加速、そして学び直しのための政策の質的向上を図ることが、男女間の賃金格差を是正し、労働力不足を解消し、社会の老齢化に対抗することに繋がる。

l  グリーントランスフォーメーション(GX3/を促進するための資金面での更なる支援、気候政策のガバナンスの向上、許認可制度の簡素化、そして送電網の強化が、気候変動に対応できるネットゼロ経済4/を達成するために不可欠である。

l  ビジネスのダイナミズムを加速し、技術革新の波及を高め、海外からの投資を促進し、デジタル化の全てを手にすることが生産性向上の鍵となる。

 

要約だけで見ると何やら単調な記述になるが、報告書は日本の老齢化、即ち2050年には高齢者の人数が労働人口の79%になるという極めて厳しい現実を踏まえている。当然、今のような高い政府負債(2024年でGDP206%)を続ければ財政の安定に極めて疑問符が付く。今のまま負債を増大させれば、やがて政府の信用は下がり、それが金利の上昇と為替の下落を招く。事実この5月中旬時点で、10年物日本国債の利回りは2.5%2.6%前後まで上昇し5/1997年以来の最高水準を更新した。野放図な財政はやがて超インフレというしっぺ返しを食らうことになる。

 

今の政府は財政健全化どころか、食品に対する消費税や現金給付にご執心である。それは国民受けするであろうが、インフレ対策にはならない。ましてや一昨日、国民民主党の玉木代表が言い出した国民1人あたり5万円の給付はもはや票目当てのバラマキでしかない。

 

 

 

 

/1     OECD Economic Surveys: Japan 2026, May 2026

/2     年度の途中で発生した災害、経済情勢の急変、予期せぬ税収の増減などに対応するため、当初の予算(本予算)を変更・追加して編成される予算。

/3     化石燃料中心の産業・社会構造をクリーンエネルギー主体へと転換し、脱炭素(カーボンニュートラル)と経済成長を同時に実現するための社会・経済システム全体の改革。

/4     温室効果ガスの「排出量」から、植林や技術による「吸収・除去量」を差し引いた合計を実質ゼロ(ネット・ゼロ)にする社会・経済システム。

/5     513日の引値は2.585%。[三井住友信託銀行ウェブサイト 2026.5.14

 

 

 

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