高市政権の積極財政は成長戦略か、それとも大博打か (2026/8/11)
圧倒的な支持率を背景に、高市首相は自らの思いを押し通し、幾つかの法案を通過させた*/。そしてインフレ対策として食料品に係る消費税を8%から1%に下げるための改正法案を秋の臨時国会に上程する(と見られる)。
今のところ、高市首相の政権運用はイケイケである。
さて、首相にとって食料品に対する消費税減税は選挙公約であり必須項目であろうが、本丸は、「日本の成長戦略」の実現である。それを「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」として示した(7月21日)。
成長戦略では、官民の投資を促進することで企業の利益を上げ、雇用を増大し、そして消費者心理を消費に向かわせるという景気の好循環を描く。その結果、税率を上げることなく税収が増えるという構図である。具体的には、官民で370兆円超を投資し、政府は年10兆円の追加支出を「機械的に想定」し、通常の歳出と別枠で計上するという青写真を描く。
では政府の投資はどうやって賄うのだろうか。骨太の方針では、これまで政府が掲げてきた「財政健全化」の文言をなくし、基礎的財政収支の黒字化を政府債務の対GDP比に置き換えた。この比率が増えない限り、債務の増大は許されるという理屈である。
しかしながら、高市首相が描く成長戦略が上手く行くという見通しは極めて危うい。投資の結果が実現するのは10年単位の将来の話である。一方、政府の投資は今の話である。そこには大きなタイムラグがある。
財源として政府債務を増やすことの問題は利払いにある。パンデミックまで、日本はデフレと金利のない世界に置かれていた。しかし、今や年率2%のインフレは所与の条件であり、10年物国債の利回りは今年1月の2%が2.9%まで膨らんでいる。国債利回りが更に上昇し続ければ、成長戦略の果実を手にする前に、財政が持たなくなる。
財政規律が極めて緩い中で積極財政を進めることは大きな賭となる。2%のインフレの中で1%の経済成長を進めることは針に糸を通すようなものである。GDPを1%伸ばすためには1%の生産性向上が必要である。人口老齢化と経済停滞の中にある日本でそれを達成するには、相当な構造改革が求められる。しかし、安倍首相のアベノミックスと異なり、高市首相のサナエノミックスには積極財政があるだけで、構造改革は捨象されている。
サナエノミックスで、積極財政、財政の安定、そして金融政策の健全化、という三つが達成できるのか、私は疑問視している。高市首相の経済政策が大博打で終わらないことを祈るばかりである。
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総額約3兆1000億円の補正予算、副首都推進法(副首都構想関連法)、皇室典範の改正といった彼女にとっての重要課題、そして所得税法改正や、電気・ガス料金の負担軽減措置など。