EU 今年の中国からの自動車輸入は倍増 (2025/12/21)

 

 

昨年、EUは中国から輸入するバッテリー電気自動車(BEV1/)に対して大幅な関税を掛けた。理由は簡単、中国の自動車メーカーが中国政府の補助金を受けて安売りを仕掛け、一気に中国製BEVが市中に溢れたからだ。当初、これで中国車のEUへの輸出は抑えられると考えたが、どっこいそうはいかなかった。

 

今年9月までの中国からの輸入車数は309700台と、昨年同期の266600台から9割跳ね上がった。BYD、リープ・モーター(零跑汽車)、東風汽車、チェリー・モーター(奇瑞汽車)は大幅に売上を伸ばした2/。高い関税にもかかわらず、輸出を伸ばしたのはなぜだろう。理由は簡単、車種をBEVからプラグインハイブリッド(PHV)に転換したからである。ハイブリッド車に占める中国車のシェアは今年の10月現在で13%、これは昨年同期の3%からの爆上がりである3/

 

EUが決めた関税措置はBEVだけが対象であり、PHVには適用されない。日本ではハイブリッド車といえばトヨタ自動車の独壇場と思っているが、PHVに関しては別の話。中国車が圧倒する。トヨタが強いのはPHVではなく、プラグインできないハイブリッド車である。

 

規制から一年後の姿を見れば分かるように、中国の自動車メーカーは欧州委員会より遙かに賢く対応した。見事に関税というペナルティを避けて、輸出を伸ばした。

 

さらに中国メーカーは、関税を回避するため、EU域内でのBEVの組立を増やす。シャオペン(小鵬汽車)はこの9月にオーストリアのグラーツでの生産を開始、BYDはハンガリーのセゲドで今月にも工場を稼働する。奇瑞汽車も来年スペインのバルセロナでBEVPHVの生産を始める(ちなみに、このバルセロナ工場は、日産自動車が生産縮小のために売却したもの)。

 

欧州委員会は、ドイツ自動車産業の要望を受け入れ、20251216日 に、2035年からの新車ガソリン/ディーゼル車販売禁止(ゼロ排出車のみ販売)の規制を緩和・見直す方針を発表した。しかし、長期的に見れば自動車の燃料転換、つまり石油燃料から電気へという流れは変わらないだろう。このEU規制の見直しにより、欧州の自動車メーカーが電動化の流れの中で中国メーカーに対抗できるかどうかは分からない。

 

なぜならば、中国製のBEVは欧州や日本の自動車メーカーに比べて圧倒的にコスト競争力がある(バッテリー製造コストで極めて優位に立つ)。さらに技術的にも先を走っている。規制を緩和したことで欧州のメーカーが一息ついている間に、その隙を突いてEU内で生産体制を確立する中国メーカーがさらに市場シェアを拡大する事は十分ありえる。

 

欧州だけではない。日本の自動車産業にとっても状況は同じである。戦後80年の間に見てきた、世界の自動車産業の栄枯盛衰の歴史を見れば、今更説明は要らない。

 

 

1/     Battery Electric Vehicle

2/     The Telegraph Dec 11th 2025

3/     The Economist Dec 18th 2025

 

 

 

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